渓流で「テンカラ」をはじめよう! 初心者向けに道具・装備・動作を解説
日本発祥の伝統的な釣り「テンカラ」。
専用竿にラインを結んで毛バリを用意するだけと、シンプルなスタイルで楽しめるとして人気です。
ただし、渓流釣り初心者の場合、どんな道具や装備を用意したらよいのかなど、わからないことが多いのではないでしょうか?
そこで今回は、テンカラの魅力や道具・装備、一連の動作などを初心者向けに解説します。
渓流釣りに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「テンカラ」ってどんな釣り?どんな魅力がある?
毛バリ釣りは日本発祥の伝統ある釣りスタイルです。
テンカラの起源や歴史は不明な点が多いものの、山間地でのタンパク質確保のためにはじまった職業漁師の釣りであり、長く受け継がれています。
イギリス発祥のフライフィッシングのように趣味が目的ではなかったため、シンプルな道具仕立てが特徴です。
現在では、シンプルな道具で手軽にヤマメやイワナを狙えるスタイルとして定着しています。
テンカラでは水に浮く毛バリを上流にキャストし、流れる毛バリに魚が食い付く瞬間が見えるエキサイティングな釣りを楽しめるのが魅力です。
では、テンカラの魅力をもう少し深掘りしていきましょう。
道具がシンプルで簡単に楽しめる
テンカラの魅力のひとつが「竿」「ライン」「毛バリ」の3アイテムで成立する、圧倒的なシンプルさです。
フライフィッシングのように頻繁に毛バリを交換することも少なく、手軽に楽しめます。
また、リールも使用しないため、キャスティングも少し練習すれば習得可能。
そのシンプルさが支持されて、近年では海外でもテンカラを楽しむ方が増えているのです。
もちろん、はまって奥を深めようと思えば、一生涯の趣味として探求できる面白さも秘めています。
アクティブでスリリングな釣りを楽しめる
テンカラはポイントに毛バリをキャストし、3秒ほど流して魚が出なければ再びキャストを繰り返します。
毛バリに反応する魚を求めて上流へ移動しながらキャストを繰り返すアクティブな釣りであり、魚が毛バリに食いつく瞬間が見えるのが魅力です。
結果的にハリに掛からなくても、ドキドキするスリリングな釣りを楽しめます。
美しい渓流で癒やされながら釣りを楽しめる
テンカラのメインターゲットであるヤマメやイワナは、川の上流域に生息しています。
川や上流へいくほど緑が豊かで水もきれいで、大自然のなかで癒やされながら釣りを楽しめるのがテンカラの魅力です。
テンカラは春から初秋までがシーズンであり、季節の移ろいを感じながら休日を満喫できます。
また、テンカラを禁止している川が少ない点にも注目。
ルアーやフライフィッシングが禁止の川であってもテンカラは許可されているケースが多く、「フライを楽しもうと思ったけど、テンカラ竿を持っていてよかった」などの場面もあり得るわけです。
美しい魚に出会える
テンカラの対象魚はヤマメやイワナなどサケ科の魚。
それぞれ独特のパーマークや斑点をまとった、美しい魚体が魅力です。
同じ魚でも川や季節によって色合いや顔つきも異なります。
また、イワナの亜種や降海する魚など、さまざまな1尾に出会えるのもテンカラの魅力です。
テンカラに必要な釣り道具・装備
テンカラはシンプルな道具仕立てが特徴のひとつです。
必要最低限の道具や装備をチェックして、ぜひテンカラをはじめてみましょう。
テンカラで必要な道具
テンカラでは下記の4つの道具があれば釣りをはじめられます。
- テンカラ専用竿
- テンカラライン
- ハリス(リーダー)
- 毛バリ
テンカラ専用竿
竿は軽い毛バリを飛ばしやすく設定されているテンカラ専用竿を用意しましょう。
しなやかな反発力で7:3から6:4のやや胴に乗る調子で、ポイントに毛バリを打ちやすくなっています。
テンカラは、3秒程度流したら毛バリを打ち直すなど1日中竿を振り続けるため、強度を確保しながらも軽量な竿がオススメです。
渓流釣りに適した長さは3.6m前後。
30cmほど長さを切り替えて使えるモデルなら、川幅に合わせられて便利です。
テンカラライン
テンカラ用のラインには、「テーパーライン」「レベルライン」「ストレートライン」の3種類があります。
いずれも一般的な道糸とは異なり、毛バリの飛ばすべく重みを持たせているのが特徴で、振り込みしやすさを左右するメインのラインです。
テンカララインについては、以下の記事で詳しく取り上げています。ハリス(リーダー)
ラインの先に結び、毛バリに直接接続する糸がハリスです。
テンカラではおもに、ナイロンラインとフロロカーボンラインの2種類が使われています。
号数は0.8号を基準に魚が大きい場合には1.0号をチョイス。
長さを1mくらい取って、グリップエンドからハリスが出る程度のバランスがベストです。
毛バリ
毛バリにはさまざまなカラーやタイプが販売されています。
初心者の場合迷ってしまいがちですが、あまり神経質に選ぶ必要はありません。
コントラストの違いで明るいタイプと黒系の2種類を用意しておけば問題ありません。
こだわるようになれば、自分で巻くのに挑戦してみてもよいでしょう。
フックサイズは#12を中心に少し小さめの#14、大きめの#10の3種類を用意しておけば十分です。
また、状況によって毛バリを少し沈めたい場合には、タングステンビーズヘッド付きのフライを使用する方法もあるので、チェックしてみてください。
テンカラで必要な釣りの装備
テンカラでは、通常の渓流釣りでの装備と服装でまったく問題ありません。
それぞれ確認しておきましょう。
渓流ベスト
毛バリやラインなど、小物を収納できるポケットを備えたベストです。
ルアーフィッシング用のポケットの大きいゲームベストより、小さなポケットを多く備えたタイプがテンカラでは適しています。
ベストではなく、フィッシングバックを身につけるスタイルもあります。
渓流ベストについては、以下の記事でも詳しく取り上げています。ウエーダー
川を遡ったり切ったりする渓流釣りでは欠かせないアイテムです。
シューズを別に用意する「ストッキングタイプ」と、シューズが一体のブーツタイプがあります。
一体型は脱ぐ履きしやすいものの、渓流では優れたフィット性で通常のシューズのように歩きやすい、ストッキングタイプがオススメです。
渓流釣り用ウェーダーについては、以下の記事でも詳しく取り上げています。ウェーディングシューズ
ストッキングタイプのウェーダーに合わせるシューズです。
底部にフェルトを備えており、滑りやすい渓流で歩きやすくなっています。
偏光グラス
偏光レンズを搭載し、水面のギラツキを抑えて水中の状態を確認するのに便利なサングラスです。
魚も発見しやすいほか、水中の石や障害物も見やすく、安全に川を遡行するためにも欠かせません。
レインウエア
山の天候は変わりやすく、突然の大雨に見舞われるケースがあります。
夏場でも濡れると冷えるため、ぜひ用意しておきましょう。
フィッシングベルト
玉網などを差し込んだり、ペットボトルホルダーを搭載したりするのに必要です。
また、腰をサポートする役割も果たします。
タモ網(ランディングネット)
魚を取り込むために必要です。
とくに、釣った魚を撮影したい場合に重宝します。
枠の大きさは、渓流釣り用として販売されている24cm程度がオススメです。
ランディングネットについては、以下の記事でも取り上げているので参考にしてみてください。テンカラの一連の動作
テンカラの一連の動作について解説していきましょう。
テンカラのキャスティング
テンカラのキャスティングは竿を前後に振るため、まず片足を前に出すスタンスを取ります。
次に差し指を伸ばしてグリップを持ち、バックキャスト。
竿を大きく後ろに倒すのではなく12時の位置で止めて、ラインを後方斜め45度の角度に跳ね上げるイメージでバックハンドキャストします。
その際、後ろに伸びるラインの時間をとって長めにタイミングを取るのがコツ。
前方には短く振り抜き、10時の位置まで竿を倒します。
竿の角度は10~12時の範囲であり、それ以上に振り幅の広いキャストではうまく遠くへ飛ばせません。
また、前方に竿を倒しすぎるとラインが伸びきる前に水面を叩いてしまいます。
魚が警戒してしまうこともあり、注意が必要です。
バックキャスト12時で止めて長く、前方へは短く力を入れずに10度の角度で止めましょう。
テンカラの誘い
テンカラでは基本的に3秒ほど流したらピックアップして打ち直します。
ただし、基本通りに繰り返しても魚が食わなければ、誘いを入れてみましょう。
- 竿を上下させて縦に揺らして、毛バリにアクションを加える
- 竿先を下げて毛バリを同じ場所に止める
- 流れに対して扇状に毛バリを横切らせる
- 下流から毛バリを引く
テンカラのアワセ
魚が毛バリに食いつく瞬間が見えたり、竿を動かした際に手元にアタリを感じたりしたら、しっかりとアワセを入れましょう。
がっちりとフッキングしないとバレる原因になります。
ハリスがアワセ切れしないよう極細ハリスを使用せず、0.8号程度なら安心です。
テンカラの取り込み
魚が掛かったら、竿をしっかり止めて弾力を活かしながら寄せましょう。
とくに、下流に走られた際には竿を上流側に倒して引きに耐えます。
魚の体力を消耗させて寄せてきたら、ハリスをつまんでタモ網に入れましょう。
竿を持つ手を大きく突き上げて取り込む方法もありますが、テンカラの仕掛けはラインとハリスの全長が竿より長いため、ハリスももって吊すように取り込むのが一般的です。
タモ網を水中に入れてすくってもよいですが、タモ網を見た魚が暴れてバレる場合があります。
テンカラのQ&A
テンカラのベストシーズンは6月です。
解禁後の3~4月がまだ水温が低く、7月以降になる暑すぎて朝夕のマズメ時でないと釣りにならないケースが多くなります。
カゲロウなどの水生昆虫が羽化するのが10度程度とされています。
テンカラは水生昆虫を模した毛バリを使うため、やはり10~14度程度が適温です。
テンカラの毛バリに正解はありません。
ただ、フライフィッシングの「マッチング・ザ・ハッチ」のようにさまざまなフライを用意して対応するのとは違い、濃淡の2色程度の毛バリで十分とするのがテンカラの特徴です。
毛バリの色や形をあまり気にせず、それよりもキャストの精度やポイントの見極めのほうが重要とするのがテンカラなのです。
エサ釣りと同様であり、とくにテンカラ向きのポイントはありません。
ただし、テンカラはエサ釣りよりピンポイントを狙いやすいため、小さな落ち込みが連続するような場所ではとくに威力を発揮します。
同じポイントに何回も打ち込んでしまうと、魚に見切られたり警戒されたりします。
一般的には、3回流して魚が出なければ違うポイントへキャストするのがオススメです。
また、浅い場所ほど見切られやすいので、深場なら粘る場合もあります。
魚が毛バリを喰ってバシャ、と出た瞬間にアワセるのは速すぎます。
ハリをしっかり咥えてハリ掛かりするよう、ワンテンポ置いてアワセを入れましょう。
とくに初心者の場合、木など障害物に毛バリを引っ掛けてしまいがちです。
慌てず、何よりも竿を折らないように注意してください。
そのまま竿をあおったり、竿を伸ばしたままラインを引っ張ると竿を破損させる恐れがあります。
いったん竿を仕舞ってからラインを引っ張りましょう。
向かい風でキャストしづらいときは、横向きから振り込むサイドキャストが有効です。
ただし、正確なキャストには慣れが必要なので、練習しておくとよいでしょう。
また、風のやむタイミングを待って振り込むのも方法のひとつです。
シンプルな釣り!テンカラをはじめよう
シンプルな道具で手軽に楽しめる「テンカラ」。
近年の山ブームを一役買って、荷物にならないテンカラを楽しむ人が増えています。
エサも使用しないため、虫が苦手な方でも安心して楽しめますよ。
はじめてで心配なら、テンカラを楽しめる管理釣り場で練習するのもオススメです。
自然豊かな渓流のなかで美しい魚に出会える、テンカラをぜひはじめてみてください。