渓流のフライフィッシング入門! 初心者向けに道具や釣り方を解説
なんとなく敷居の高いイメージがある「フライフィッシング」。
英国が発祥の地で横文字が並びますが、基本的な動作をマスターすれば初心者でも十分楽しめます。
なかでも渓流のフライフィッシングは、美しい自然の景色のなかできれいな水と魚に出会えるのが魅力です。
今回は、初心者向けに渓流のフライフィッシングで必要な道具や装備、キャスト方法などを解説します。
極めるのが難しい奥深さも多くのフライフィッシャーを魅了しており、一生モノの趣味としてはじめてみてはいかがでしょうか。
フライフィッシングとは
フライフィッシングはイギリスが発祥の地とされ、紳士のスポーツとして鷹狩やハンディングなどと一緒に親しまれていました。
現在でもスポーツフィッシングとして、世界中で人気の釣りです。
日本においては明治時代、英国商人トーマス・グラバーが栃木県日光市の湯川と湯ノ湖にカワマスを放流したのがはじまりとされています。
日本にも毛鉤を使った「テンカラ」釣りがありますが、テンカラがのべ竿を使うのに対して、フライフィッシングはフライリールを使用するのが特徴です。
ひとくちにフライフィッシングといっても、ジャンルによって海や湖、川とフィールドが異なるほか、ターゲットとなる魚も異なります。
渓流のフライフィッシングでは、ヤマメやイワナ、ニジマスなど美しい魚体をもつマス類がターゲット。
エサとしているカゲロウやトビケラ、カワゲラなどの昆虫をイミテーションした「フライ」で狙います。
美しい景色のなかでネイティブな魚に出会えるのは、渓流のフライフィッシングを楽しむ方の特権です。
渓流で出会える魚については、下記の記事でも詳しく取り上げていますので参考にしてみてください。「マッチ・ザ・ハッチ」「ライズ」とは
フライフィッシングで押さえておきたい言葉として、「マッチ・ザ・ハッチ」と「ライズ」があります。
ハッチとは、水生昆虫が脱皮すること。
マス類は、ハッチを水中や水面でおこなっている水生昆虫を狙っています。
時期やフィールドの状況を考慮しながら、ハッチしている水生昆虫にあわせたフライを選択するのが「マッチ・ザ・ハッチ」であり、フライフィッシングで魚に出会うために欠かせない概念です。
「ライズ」とは、魚が水面近くの水生昆虫を食べるときに水しぶきが上がったり、波紋が広がる状況。
ハッチを狙っている魚が確実にいる状態であり、フライフィッシングで魚をかける絶好のチャンスです。
これから渓流のフライフィッシングをはじめるのであれば「マッチ・ザ・ハッチ」と「ライズ」を意識して、かけがいのない最初の1匹に出会いましょう。
渓流のフライフィッシングのシーズン
渓流のフライフィッシングでは、川を管理している漁協組合が定めている遊漁期間に従わなければなりません。
川によって異なりますが、およそ3月から9月中旬がシーズン。
1月や2月中に解禁される川もあるものの、最盛期は水生昆虫が活発にハッチする初夏です。
渓流のフライフィッシングに必要な道具
フライフィッシングがどのような釣りなのかわかったところで、必要なタックルについて知っておきましょう。
以下のような道具を使用します。
- フライロッド
- フライリール
- バッキングライン
- フライライン
- テーパーリーダー
- フライ
なお、フライフィッシングのロッドやラインの表記には「ポンド」「フィート」が使われています。
多くの釣りジャンルで使用されている「号」とは異なる点に注意が必要です。
では、それぞれみていきましょう。
フライロッド
フライラインで軽いフライをキャストしやすく設計されているのが、フライフィッシング専用の竿「フライロッド」です。
フライラインの重さに応じて選ぶのが基本で、1~15番に分かれています。
たとえば、4番のフライロッドなら4番のフライラインをチョイスするわけです。
数字が大きくなるほど重くなるのが特徴。
渓流のフライフィッシングでは0~4番くらいが適しています。
渓流のフライフィッシングでは、0~4番のフライロッドを選ぼう
フライリール
フライロッドには、フライフィッシング専用の「フライリール」をセットします。
ラインを巻いておく「スプール」が回転する仕組みで、必要に応じてラインが引き出せるようになっており、「ドラグ」と呼ばれるブレーキを搭載しているのが一般的です。
ただし、渓流のフライフィッシングでは手でラインをたぐって魚とやり取りするケースが多く、ドラグ性能に神経質になる必要はありません。
サイズは「3~4番用」というように目安が表示されていますので、おおかたフライロッドの番手に合わせましょう。
フライリールはフライロッドの番手に合わせよう
バッキングライン
フライリールの下巻きとして巻くラインが「バッキングライン」です。
フライラインをリールに直接巻いてしまうと巻き取りにくく、クセも付きやすくなります。
そこで、フライラインを直接リールに巻かずバッキングラインをある程度巻いておき、フライラインと接続しましょう。
渓流フライフィッシングなら、20ポンドの強度で100ヤード(90メートル)程度巻いておくのがオススメです。
フライリールには、20ポンドのバッキングラインを100ヤード程度巻いておこう
フライライン
フライフィッシングでメインとなるラインです。
フライロッドの番手に合わせて選択しましょう。
フライラインには大きく分けて水面に浮く「フローティングライン」と、沈む「シンキングライン」があります。
フィールドや釣り方に合わせて選びますが、渓流フライフィッシングではフローティングラインを用意しておけば問題ありません。
また、フライラインの特徴として下記の4種類の「テーパーデザイン」があります。
- DT(ダブルテーパー)
- WF(ウェイトフォワード)
- ST(シューティングテーパー)
- SL(シューティングライン)
それぞれ太さが変化する具合や形状が異なりますが、 小河川の渓流釣りならDT(ダブルテーパー)がオススメ です。
川幅があって遠投が必要ならば、よりロングキャストに向いているWF(ウェイトフォワード)を用意しておきましょう。
フライラインの太さはリールの番手に合わせよう
初心者であれば、最初はDTかWFのフローティングラインがオススメ
テーパーリーダー
一般的な釣りで使われている透明な道糸に当たるのが、フライフィッシングのテーパーリーダーです。
先へいくほど細くなる構造で、一般的な釣りでハリスに当たる「ティペット」の先端部分にフライを接続します。
テーパーリーダーの番手は先端のティペットの太さによって「X」で表示されており、フライラインとは逆に数字が大きくなるほど細くなるのが特徴です。
ティペットの太さで接続できるフライの大きさが決まり、細いティペットに大きなフライは接続できません。
渓流のフライフィッシングでは、長さ9フィート、太さ6Xがスタンダードな仕様。ティペットはフライを交換するたびにだんだん短くなっていくため、つないで足していきます。
渓流のフライフィッシングでは、長さ9フィート・太さ6Xがスタンダードなテーパーリーダー
フライ
水棲昆虫を模した毛バリが「フライ」です。
ティペットに接続して使います。
さまざまな種類や大きさがあり、フィールドや魚の状況に合わせて選択しなければなりません。
サイズは番手の数字が大きいほど小さくなるのが特徴で、 渓流や管理釣り場なら14番がスタンダードな大きさ です。
フライには大きく分けて水面に浮くフライと沈むフライがあり、水面に浮くフライがドライフライ。
おもに水面を流れるカゲロウやトビケラなどの水生昆虫を模しており、魚が飛びつく瞬間が見えるダイナミックな釣りを楽しめます。
沈むフライにはニンフ、ウェット、ストリーマーなどあり、とくにニンフは中層から低層にアプローチしやすく、ドライフライに反応がない渓流で活躍します。
初心者であれば、まずはドライフライとニンフを2~3種類程度用意しておくとよいでしょう。
渓流のフライフィッシングなら14番がスタンダードなフライの大きさ
初心者ならドライフライとニンフを2~3種類程度用意しておこう
渓流のフライフィッシングで必要な装備
渓流のフライフィッシングで身につける装備は、基本的に一般的な渓流釣りのスタイルで問題ありません。
一通り用意しておけば、渓流のエサ釣りやルアーフィッシングを楽しむ際にも共用可能です。
ベスト
渓流釣り向けベストならどれでもよいですが、比較的小物を携帯する渓流のフライフィッシングではポケットを多く備えた専用ベストがオススメです。
フィッシングベストではなく、フィッシングバックやショルダーバッグを身につけるスタイルもあります。
渓流ベストについては、下記の記事で詳しく取り上げていますので、参考にしてみてください。ウェーダー
冷たい渓流に立ち込むフライフィッシングでは、体への水の浸入を防ぐウェーダーが欠かせません。
大きく分けてブーツ一体型と別途シューズを合わせるストッキングタイプがあり、渓流での歩きやすさを考慮するとストッキングタイプがオススメです。
渓流釣り用ウェーダーについては、下記の記事でも詳しく取り上げていますので参考にしてみてください。ウェーディングシューズ
ストッキングタイプのウェーダーに合わせるのがウェーディングシューズです。
フェルトソールを備えており、滑りやすい渓流での移動をサポートします。
レインジャケット
山間部の渓流では、晴れていても急に天候が悪化する場合があります。
突然の雨に対応すべく、釣り用のレインジャケットを用意しておきましょう。
渓流のフライフィッシングでは立ち込むケースも想定して、 丈が短めのショートタイプがオススメ です。
ゲーター
ひざあたりから下を覆うのがゲーターです。
夏場の渓流釣りや源流などで、快適かつ軽快に釣りを楽しみたい場合に使用します。
薄手のストッキングを履くとの比べると、石に足をぶつけたときにケガや足の冷えを防ぐ効果も発揮します。
ランディングネット
釣れた魚をすくうのに必要です。
サイズはさまざまな大きさが発売されており、ターゲットの大きさに合わせます。
渓流のフライフィッシングでは、あまり大きいタイプでなくても問題ありません。
渓流のランディングネットについては、以下の記事で詳しく取り上げています。渓流ベルト
ランディングネットを腰部に挟んだり、ボトルホルダーを装着したりで役立つアイテムです。
腰をサポートして、腰痛をやわらげる効果も期待できます。
フライフィッシングで役立つアクセサリー
フライフィッシングに役立つアクセサリーを豊富に用意しておけば、より快適に釣りを楽しめます。
なかには、フライフィッシング特有のアクセサリーがありますが、自分にとっての利便性を考慮して少しずつ揃えていきましょう。
クリッパー
フライやリーダーの交換で使う糸切りハサミです。
反対側にニードルがついているタイプなら、ティペットが針のアイに通しにくいときに役立ちます。
フォーセップ
魚の口から釣り針が外れにくいときに使用する針外しです。
フライフロータント
水面に浮かべるドライフライは、水を吸うと次第に沈みやすくなってしまうため注意が必要です。
フライの浮力補助剤「フライフロータント」があれば、浮力を維持きできます。
フライボックス
フライを携帯するのに便利です。
フライの種類や大きさに対応すべく、さまざまなタイプが発売されています。
フライフィッシングのキャスティング
渓流のフライフィッシングでは頭上を木で覆われているシチュエーションも多く、いくつかのキャスティングを覚えておきましょう。
なかでも代表的な3つのキャスティングについて解説します。
オーバーヘッドキャスト
フライフィッシングのキャストでもっとも基本となるのが「オーバーヘッドキャスト」です。
前方へのフライラインの振り込み(フォワードキャスト)と、後方へ振り込む(バックキャスト)を真上でおこないます。
フォワードキャストとバックキャストを繰り返す動作を「フォルスキャスト」と呼び、フライフィッシングでは必須のキャストです。
サイドキャスト
文字通り、ロッドを横に振ってフライを撃ち込むのがサイドキャストです。
フライラインのループを横につくるのが特徴で、オーバーヘッドキャストのロッドを倒した状態だと考えればよいでしょう。
フォワードキャストとバックキャストを繰り返す点では、オーバーヘッドキャストと同じです。
障害物の状態によっては、利き手と反対側でキャストする「オフショルダー・サイドキャスト」を身につけておくと役立ちます。
ロールキャスト
オーバーヘッドキャストやサイドキャストでロッドを振るスペースを「バックスペース」と呼びますが、渓流ではバックスペースが十分にとれるとは限りません。
背後に木があるなど、バックスペースがとれないシーンで役立つのがロールキャストです。
フライロッドをかろうじて振れるスペースさえあれば、キャスト可能です。
まず、水面に浮かべたフライラインをロッドを跳ね上げるように立ち上げます。
次に、ロッドを背後まで倒してフライラインとロッドで「D」の字を作ったら、前方にロッドを振り込んでフライを飛ばします。
老舗ゲームフィッシングブランド「ティムコ」では、フライフィッシングスクールやツアーを開催しています。下記の記事で紹介していますので、気になる方はチェックしてみてください。渓流でのフライの流し方
渓流のフライフィッシングでは、フローティングラインを使用したドライフライの釣りが基本になります。
ニンフで沈める釣り方もありますが、水面に魚が飛び出るスリリングな釣りを楽しめるのがドライニンフのフライフィッシングです。
ドライフライの流し方は、 流れに自然な状態で流す「ナチュラルドラフト」が基本 。
より自然に流して魚に違和感を与えないかが、釣果につながります。
フライラインが流されて不自然な動きが加わってしまう「ドラッグ」を防ぐのがポイントです。
ロッド操作でラインを上流に動かす操作「ラインメンディング」でドラッグを回避しましょう。
ただし、フライラインを動かしすぎるとフライも動いてしまい、魚が出にくくなります。
ポイントとの距離が短ければ、フライラインを立てて流れの干渉を避ける方法も有効です。
フライタイイングとは
フライを自分で巻くプロセスが「フライタイイング」で、フライフィッシングの楽しみのひとつです。
鳥の羽や動物の毛が販売されているので、どんな昆虫を食べているのだろうと想像しながらオリジナルのフライ作成を楽しめます。
もちろん向き不向きがあるので、完成されたフライを購入してもまったく問題ありません。
脱初心者を目指すタイミングで、タイイングにもチャレンジしてみましょう。
渓流のフライフィッシングをはじめよう
独特な道具や釣り方が特徴的なフライフィッシング。
なかでも渓流のフライフィッシングはライトなタックルで楽しみやすく、これからはじめたいと考えている方にもぴったりな釣りです。
タックルや装備、フライタイイングなどにこだわるほど面白味が増すのも、フライフィッシングの魅力。
一生涯楽しめる趣味を探しているなら、ぜひ渓流のフライフィッシングをはじめてみませんか?